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レーザー熱処理について

レーザーを利用して加熱する熱処理をレーザー熱処理とよんでいます。

現在では、焼入れのための急速表面加熱でレーザーが用いられています。

品物の表面の微小部分を急速加熱して、レーザーを止めると、熱伝導で品物に熱を奪われて、それで焼入れ硬化します。

これを「自己冷却」という言い方をします。

そして、同様に急速加熱する高周波や電子ビームを用いる方法を含めて、「急加熱→自己冷却」で表面焼入れをする方法は「衝撃焼入れ」と呼ばれることもあります。

レーザー熱処理の例

レーザーを用いる場合では、たとえば、1~5KW以上の高出力レーザー光を照射して加熱すると、その表面部が急速に加熱されます。

照射部分からレーザー光を移動させてレーザー光が当たらなくなった表層部分は、品物の伝導によって熱が奪われて、急速に冷却されることで焼入れした状態と同じになります。

このように、微小部分の表面熱処理の一種として利用されるようになった、比較的新しい熱処理技術です。

高周波焼入れとの比較

表面部分を加熱する方法では、現在、最も広く行われているのは、高周波焼入れです。

これは、コイルに高周波電流を流して誘導加熱する方法で、コイルの形状が加熱に反映します。

これに対して、レーザーを利用する方法は、レーザービームが届けば加熱できて、焼入れが可能です。

だから、高周波焼入れのように、形状に合うコイルを必要としないという利点があります。

しかし、レーザーでは、加熱範囲が小さく、限定的なので、適用できる用途は限られてきます。

また、高周波焼入れでは、周波数を選ぶことで、硬化深度は1~5mm程度とレーザー焼入れよりも深い焼入れができます。

また、ポリマー水溶液で冷却しながら焼入れしますので、レーザー加熱と違って、広範囲で確実に硬化させることができます。

これに対してレーザー焼入れは、硬化深度はミクロン単位で示される深さ程度なので、鋭利な刃物の先端などの限定した用途になります。

レーザー焼入れは、瞬時に加熱して、品物の熱伝導で自己冷却する方法で、ほとんどの場合は特別の冷却はとりません。

焼戻ししないで使用する品物が多い

レーザー焼入れや電子ビーム焼入れなどの高エネルギーを使う新しい熱処理法は、焼入れする部分が微小なために、品物の変形が少ないという利点があります。

そして、熱処理操作は焼入れだけで完結させており、焼戻しなどの工程は取らない(とれない)場合が多いようです。

なぜ焼戻しをしないのかということについて、あまり詳しい資料を見たことがありませんが、ある意味でいえば、使い捨ての剃刀の刃先では、焼入れされた組織や硬さなどの状態がどうなっているかなどは、どうでもいいことで、「スムーズに剃れればいい」のでしょう。

だから、ほかの焼き入れ方法よりも焼入れ変形が小さくて、ある程度の期間の使用に耐えれば良い … という基準で製品に適用されているということでしょう。

このように、高周波を用いる衝撃焼入れや電子ビーム、レーザーなどの高エネルギーを利用した微小部分の焼入れなどでも同様に、焼戻しをしないで製品化されているものは少なくありません。

この「焼戻し無し」については、焼戻しが不要というのではなく、焼戻しをすると、変形などのデメリットが出るので、単に、行われていないということかもしれません。

あるいは、焼入れ層がごく薄く、それを均一に焼戻しす方法がないのか、または、特に、焼戻しの効果がない … などの理由などがあるのかもしれません。

しかし、それよりも、この処理だけで、耐摩耗性などの一定の焼入れ効果が得られているので、そこまで多岐に検討されていないような気がします。

これは変な気もしますが、全体焼入れや高周波焼入れなどに実施される「焼戻し」は、焼戻しをしないよりもしたほうが、いろいろな面で特性にすぐれているために「焼戻しは必要 … 」 とされているだけのことだと考えれば、このようなやり方も、一つの熱処理法と言えるでしょう。

だからもちろん、これらの新しい熱処理でも、焼戻しの可否や焼戻し技術も研究されていくでしょうし、レーザー焼入れ自体が新しい加工技術ですので、いろいろなことがわかってくるのには時間がかかるでしょう。

現状では、発展過程の状態といえるのかもしれません。

熱処理の考え方からすれば、レーザー焼入れなどで得られる焼き入れ部分の硬さについては、高周波焼入れなどの表面熱処理と同様で、炭素鋼や低合金鋼では炭素量に依存した硬さが得られます。

しかし、瞬間加熱なので、加熱状態のコントロールも難しいので、一般の焼入れの組織や硬さとは同じではないでしょうし、また、焼入れ状態の良否の確認も簡単ではありません。

つまり、S45C 程度の炭素量でも、刃物として使用できる充分な硬さになるはずですが、非常に短時間の高エネルギー加熱で加熱温度のコントロールも難しいために、残留オーステナイトが多くなっているかもしれません。

だから、鋼種の選定も大変になるかもしれません。

高合金鋼にすると、合金の溶け込み不足で十分な硬さが入らない場合なども出るので、充分に実験をするなどで、適用条件を決める必要が出てきます。

もちろん、微小な硬化部分ですから、硬さ測定も簡単ではないですし、焼入れ状態の評価も特殊な方法をとるなどで大変ですが、今後は、レーザーなどを使った微小部分の焼入れは、特定製品の熱処理方法として広く利用されていくでしょう。