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鉄鋼の流動槽熱処理

セラミック微粉などを入れた槽(加熱容器)の底部から熱した気体を流して、微粉を浮遊し流動させた中に品物を入れて加熱する熱処理方法を流動槽熱処理といいます。

この流動槽は、流動床、流動粒子炉、流動槽炉などとも呼ばれます。

流動層は、プラスチックなどの軽量品の着色やコーティングなどでに使用されています。

しかし、鉄鋼のように重量物を浮揚させるには問題が多く、現状では、鉄鋼の熱処理での使用例は少ないようです。

かつては600℃程度以下の表面処理用などで、この流動槽が開発されました。

しかし、鉄鋼製品用の流動槽炉は、温度分布がそんなに良くなかったことや、流動用ガス(窒素ガスや混合ガスなど)のコストがかかることなどもあって、鉄鋼の熱処理用途では使われなくなっていきました。

このような、槽(ポットなど)を用いる熱処理としては、古くは、「鉛浴」を用いて行われていましたが、使用温度が高温になると、鉛蒸気が飛散して鉛害の危険性から、それを避けるために、鉛浴に変わって中性ソルトを用いる「ソルトバス」に移行した … という歴史があります。

しかし、そのソルトバスにも欠点があって、(1)熱処理後に品物を洗浄する必要性があること  (2)品物にソルト液が残留してさびや穴詰まりの原因になること … などの問題があるために、これらを改善しようと流動槽炉による代替が考えられました。

しかし、鉄鋼の熱処理用としては普及しませんでした。

現在では、鉄鋼の熱処理に使用されている例はほとんど見なくなりました。

槽(ポット)を用いる鉄鋼の熱処理で実用的なものは、ソルトバス以外は見当たりません。

恒温熱処理などの特殊な熱処理はソルトバスの得意分野で、ソルトバスの欠点を補える、ランニングコストが少なくてクリーンな熱処理装置が望まれていたのですが、鉄鋼用の流動槽炉に関する目新しいニュースも見られない状況ですので、流動層炉の改良・開発は滞っているのでしょう。

そしてまた、現状では、ソルトバス自体も消えゆく運命にあります。

ソルトバスを用いて行われる、マルクエンチ・オーステンパーなどの「恒温熱処理法」も、熱処理の教科書から消えていくことになるかもしれません。